
扶養内のボーダーラインはいくらまで? 103万円、130万円、150万円で何が変わる?

派遣先や勤務先で、扶養の範囲内で働きたいけどいくらまで働けるのか?と思ったことはないでしょうか。扶養とは何か、最近の制度変更点やどんなことに注意すればいいのか詳しくご説明します。
扶養内控除とは?

① 扶養内控除とは何か
ひとくちに扶養といっても、実生活における扶養と、税金の控除と、社会保険の控除の3通りあります。扶養内控除になるとは、その税金や社会保険での控除になる場合を指します。
② 所得税の扶養内のボーダーライン
所得税の扶養内控除のボーダーラインは、配偶者か配偶者以外の家族かによって大きく2種類にわかれます。さらに配偶者については配偶者控除と配偶者特別控除という2種類の控除があり、お子さんや親などの扶養親族については扶養控除というものがあります。
扶養内控除を受けることが出来るかどうかは、年末から年明けに発行される源泉徴収票の記載された支払金額で確認します。この支払金額は源泉所得税や社会保険などを差し引いた手取りではなく、年収にあたります。
・配偶者控除
配偶者の合計所得金額が38万円以下のとき、配偶者控除をうけることができます。
ただし税制改正によって2018年1月以降、納税者本人の年収に応じて控除金額が変わります。
いままでは70歳未満の配偶者は一律38万円でしたが、2018年1月以降、納税者本人の給与所得の金額に応じて控除額が減額されます。
具体的には、例えばご主人の合計所得金額が900万円以下のときは38万円控除されます。
合計所得金額が900万円を超えて950万円以下のときは26万円控除されます。合計所得金額が950万円を超えて1千万以下のときは13万円控除されます。
納税者本人であるご主人の合計所得金額が1千万円を超える場合は配偶者控除を受けることができません。
【出典】
配偶者控除|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1191.htm
・配偶者特別控除
納税者本人の合計所得金額が1千万円以下のとき、配偶者の年収に応じて配偶者特別控除を受けることができます。ただし、改正によって2018年1月以降、配偶者の年収枠が広がりました。
2018年1月以降は、パートの合計所得金額123万円以下までとなっています。
給与所得控除で逆算すると年収103万円以上2,015,999円以下となります。
ただし、こちらも納税者本人の年収に応じて、3段階に分かれます。
納税者本人の年収900万円以下のとき、年収900万円超950万円以下、950万円超1千万円以下の3段階に加えて、9段階に分かれている配偶者の合計所得金額に応じて、納税者の配偶者特別控除金額が決まります。納税者本人の年収が1千万円を超える場合には従来どおり配偶者特別控除はありません。
例えば、ご主人の年収が900万円以下のとき、配偶者のパートの年収が150万円まで(合計所得金額38万円超85万円以下)は配偶者特別控除38万円となります。
【出典】
配偶者特別控除|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1195.htm
・扶養控除
生計一の親族の合計所得金額が38万円以下?(ただし、所得が給与のみの場合は給与収入が103万円以下)のときは、扶養控除を受けることができます。
③ 社会保険の扶養内のボーダーライン
厚生年金の被保険者数が501人以上の会社に雇用契約1年以上で週20時間以上働いている場合、パート年収が年間106万円を超えると、社会保険に自分で加入する必要があります。
上記に該当しない場合は、年収130万円以上の場合に社会保険に自分で加入する必要があります。
扶養内で就業するメリット
例えば奥様にパート収入がある場合の例で考えてみましょう。説明をわかりやすくするために、所得税の各種控除は社会保険料控除と基礎控除以外ないものと仮定します。
① 年収103万円未満のメリット
年収103万円が所得税の扶養控除限度額です。扶養に入ると、奥様に所得税も社会保険もかからず、年収103万円未満がまるまる手取りとなります。また、ご主人の合計所得金額によりますが、配偶者控除が控除されます。
② 年収130万円未満のメリット
奥様に所得税がかかりますが、年収130万円は社会保険料の扶養内控除のボーダーライン内のため、健康保険料や厚生年金の本人負担分がかかりません。所得税は給与所得控除の65万円と基礎控除の38万円の合計額である103万円を超えた部分に対し5%の所得税と2.1%の復興所得税がかかります。また、ご主人の合計所得金額によりますが、配偶者特別控除を控除することができます。
③ 年収150万円未満のメリット
奥様の年収が103万円を超えると所得税がかかり、さらに130万円を超えると扶養から外れるため社会保険に加入することになります。厚生年金に加入することにより、将来受け取る年金の金額が増加します。
また、ご主人の合計所得金額によりますが、配偶者特別控除を控除することができます。
扶養内を超えるとどうなる?

① 年収103万円のボーダーラインを超えた場合のデメリット
もしご主人が年末調整で配偶者控除を受けていた場合には、ご主人の年末調整のやり直しが必要となります。なお、お子さんや親など配偶者以外の方は、税金の扶養内控除のボーダーラインは103万円のみになります。お子さんが思っていたよりも働いていて扶養控除をとることができなかった、などといったことは良くあるので、年末調整の際はしっかり確認して下さい。
② 年収130万円のボーダーラインを超えた場合のデメリット
もしご主人が年末調整で配偶者特別控除を受けている場合は、奥様の年収が150万円以下であればご主人の合計所得金額に応じた配偶者特別控除を受けることができます。また本人で社会保険に加入する必要があります。
③ 年収150万円のボーダーラインを超えた場合のデメリット
ご主人の年収に応じた合計所得金額と、奥様のパート収入に応じた9段階の合計所得金額の区分に応じて配偶者控除金額が38万円から減額されていきます。また奥様本人で社会保険に加入する必要があります。
ボーダーラインを超えた場合に給与から天引きされる源泉所得税や社会保険料はいくらになるのか調べる場合は、下記をご参考下さい。
【出典】
H30年源泉徴収税額表
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2017/01.htm
まとめ
パート収入を増やしたら、扶養の範囲内を少し超えてしまっていたとか、社会保険に自分で加入しなくてはならなくなったなど、結果的に扶養範囲内のほうが世帯収入が良かったなどといったことのないよう、どちらが良いか事前に試算してみて下さいね。
※当コラムに掲載されている情報は2018年9月時点のものです。- ライター:添田裕美(そえだ ひろみ)