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フレックスタイム制とは?コアタイムや残業、清算期間についても徹底解説

フレックスタイム制とは?コアタイムや残業、清算期間についても徹底解説

働き方の多様性が認められる時代となった今、企業に求められているのは、社員それぞれが効率よく仕事ができる環境の提供です。

政府による「働き方改革」の推進はテレビ番組やニュースの報道で目にした方も多いのではないでしょうか。

そんな働き方改革を実現する取り組みのひとつにフレックスタイム制があります。今回はフレックスタイム制の基礎知識をはじめ、メリットやデメリット、注意点などを紹介します。

フレックスタイム制とは

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フレックスタイム制とは、曲げる、柔軟という意味のフレックス(Flex)が語源の通り、あらかじめ定めた総労働時間内で、社員が日々の出社・退社時刻、労働時間を自ら決めることができる制度です。

合計の労働時間が所定労働時間を満たすのであれば、1日の労働時間を決められた範囲内で自由に設定できるため、社員に仕事と生活の調和を図りながら効率的に働いてもらうことが可能です。

コアタイムとフレキシブルタイム

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一般的なフレックスタイム制では、必ず働かなければならない時間帯であるコアタイム、任意のタイミングで出社・退社しても良いフレキシブルタイムが設けられています。

たとえば、朝8時までに子どもを保育園に送り届けた後に余裕を持って出社、通常通り勤務してから17時頃に退社し、保育園に子どもを迎えに行って帰宅することもできます。夫婦で送迎を交代し、送迎を担当しない日は長く勤務することで必要な労働時間を補うという活用方法もあります。

同様に、夜間大学に通い、講義のない日で労働時間を補うことも可能です。フレックスタイム制では、コアタイム内にしっかりと勤務できていれば、社員それぞれのライフスタイルに合った形で働き方を実現できます。

スーパーフレックスタイム

コアタイムを撤廃したスーパーフレックスタイム制へ移行している企業もあります。コアタイムがなくなることで、通常のフレックスタイム制度以上に、社員はいつでも好きな時間に出社・退社ができるようになります。勤怠管理の徹底などは必要となりますが、社員の自主性を高める取り組みとして導入が検討され始めています。

時差出勤制度との違い

時差出勤は出社・退社の時間を変更することができる制度です。フレックスタイム制と類似していますが、時差出勤制度は電車やバスの混み合う時間を避けるためのものであり、任意のタイミングで出社・退社できるわけではなく、労働時間が固定されている点は変わりません。

フレックスタイム制度に適している職種

フレックスタイムは、ある程度個人で業務に取り組むことができ、時間や場所にとらわれず働くことのできる職種が適しています。例えば、企画職や事務職などが挙げられるでしょう。

逆に営業職のフォローや取引先の来客対応など社内外との連携が多いアシスタントや、持ち場を離れることができない接客員、工場など業務を行う時間や場所が決まっている作業員はフレックスタイム制を導入するのが難しい傾向にあります。

フレックスタイム制のメリット、デメリット

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多くの企業でも導入が進んでいるフレックスタイム制は、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

フレックスタイム制のメリット

1.ワークライフバランスの両立を叶える
フレックスタイム制は出社・退社の時間が自由に設定できるため、生活スタイルに合わせた勤務が可能になります。

上述のように、共働きで育児をしている夫婦であれば、保育園への送迎をすることも可能です。

仕事と生活の調和であるワークライフバランスの実現は、働き方改革で目指す目標のひとつでもあります。

2.残業時間が減り、業務効率が上がる
これまでは業務時間内に仕事が終わらなかったとしても、「残業して間に合わせればいい」といった考えから社員が残業してしまうことも珍しくありませんでした。

フレックスタイム制により退勤時間が自由に定められるようになると、「限られた時間の中で終わらせよう」という意識改革期待でき、業務効率の向上につながります。

3.企業のイメージ向上につながる
多様な働き方が求められている時代において、フレックスタイム制やテレワークを導入している企業は、多くの求職者から注目を集めます。

特に「育児が落ち着いたから復職したい」「親の介護と仕事を両立したい」といった求職者は、業務内容だけでなく勤務形態も重要なポイントとして考えています。フレックスタイム制は「働きやすい会社」というイメージ向上に貢献できるでしょう。

フレックスタイム制のデメリット

1.社員それぞれの自己管理能力に依存することになる
フレックスタイム制は自由度が高いからこそ、社員ひとりひとりに自己管理能力が求められます。「時間さえ守れば後は自由にしていい」といった誤解も生まれやすく、かえって業務効率を落としてしまうリスクも無視できません。

企業は社員の成果を把握することで、業務への取り組みを判断するとともに、勤怠管理を徹底しましょう。

2.社員同士のコミュニケーション不足が発生する
社員それぞれの出社・退社時間が異なると、自然と顔を合わせる時間も少なくなります。コミュニケーション不足によりすれ違いが生じると、業務にも支障が出てくる可能性もあるでしょう。

しっかりと報告・連絡・相談ができるよう、チャットツールやオンライン会議ツールの導入、定期的なミーティングの開催といった、コミュニケーションを活性化する対策も不可欠です。

3.時間によってクライアント対応が難しくなる
フレックスタイム制では、社員がオフィスにいる時間がわかりにくくなります。

事前に設定されている会議などは問題ないものの、緊急時はクライアントへの対応が遅れてしまう事態も考えられます。

社員同士で連絡を共有できる体制を整えておくなど、業務を属人化しないようにすれば、クライアント対応に時間を要する事態を防げるでしょう。

フレックスタイム制度の導入で注意すべきこと

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フレックスタイム制を導入する際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。特に気をつけたいポイントは、以下の2点です。

1.就業規則への規定

フレックスタイム制を導入する場合、出社・退社の時刻を社員の決定に委ねる旨を定め、就業規則に規定する必要があります。

ここで重要なのは、出社・退社時刻どちらも社員の決定に委ねるものであること。片方のみ社員の決定に委ねるものはフレックスタイム制として認められません。

2.労使協定での締結

フレックスタイム制導入の際は、労使協定で基本的な枠組みを定めなければいけません。ここで定めるべきなのは、以下の6点です。

① 対象となる社員の範囲
② 清算期間
③ 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
④ 標準となる1日の労働時間
⑤ コアタイム(※任意)
⑥ フレキシブルタイム(※任意)

フレックスタイム制では、定められた期間内で労働時間の長さを選択できますが、この定められた期間を「清算期間」と呼んでいます。社員は清算期間の中で所定の労働時間を満たせるよう、労働時間を調整しなければなりません。

フレックスタイム制における残業と清算期間

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フレックスタイム制は歴史が古く、1987年の労働基準法の改正をきっかけに、1988年4月から正式に導入された変形労働時間制の一種です。2018年6月の働き方改革推進法の成立を踏まえ、もともと1ヶ月だった清算期間の上限が3ヶ月に変わりました。

フレックスタイム制を導入した場合、社員は日々の労働時間を自ら決定することになります。このとき、1日8時間、週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、その時点で時間外労働にはみなされなくなります。一方で、1日の標準の労働時間に達しない時間も欠勤となるわけでもありません。

フレックスタイム制導入後、清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。(時間外労働を行うためには36協定の締結が必要)

従来では、1ヶ月単位で精算するため、労働時間が超過していた場合、割増賃金の支払いが必要でした。しかし、清算期間の上限が延長されたことにより、3ヶ月の平均労働時間が法定労働時間以内であれば、割増賃金の支払いは必要なくなります。

また、2023年4月以降はフレックスタイム制を導入した中小企業であっても、60時間を超える時間外労働に対しては特別割増率(50%)による割増賃金(残業代)を払わなければいけません。精算期間が1ヶ月以上の場合は時間外労働も長時間発生することになり、清算期間を超える残業代が高額となる可能性もあります。

清算期間の延長による社員側のメリット

働き方改革一環とした法改正(2019年4月)により、フレックスタイム制度の清算期間の上限が3ヶ月に延長となりました。これにより、清算期間を3ヶ月とした場合には、社員も1ヶ月の総労働時間が不足していれば欠勤扱いになっていましたが、3ヶ月以内に法定労働時間を超えていた場合は振り替えられるようになりました。

たとえば小学生の子どもがいる家庭では、夏休みのある8月は早く帰って家族との時間を増やし、小学校が再開する9月は長めに働くといったように、清算期間が長くなったことで更に自由な働き方に対応できるようになりました。

3ヶ月のフレックスタイム制は、繁忙期と閑散期がはっきりと決まっている業種であれば、業務の割り振りも行いやすくなります。他部署との連携も比較的少なく、場所や時間にとらわれない業種では、清算期間を3ヶ月に設定するのも良いでしょう。

まとめ

厚生労働省のデータによると、2019年4月時点においてフレックスタイム制を導入している企業は全体の5%で依然として進んでいません。

しかし、今後少子高齢化により労働人口の減少が避けられない日本において、社員のライフスタイルの多様化に対応できるだけでなく、残業時間の削減や業務効率アップにつながるこの制度は広がっていくことでしょう。

まずは現状の課題を洗い出しつつ、フレックスタイム制度のメリットとデメリットを踏まえて導入を検討してみてはいかがでしょうか。