
新卒の通年採用はいつから?メリットとデメリット、中小企業の対策を解説

「通年採用」とは、新卒や中途を問わずに1年間を通じて採用活動をおこなうことです。中途採用においては、基本的に必要に応じて採用活動をおこなう、もしくは優秀な人材確保のため通年採用をおこなっている企業が多いでしょう。
一方、新卒の採用活動においては経団連が中心となり、大学3年生の3月に情報解禁、大学4年生の6月に選考開始という一定のルールに沿っておこなっていました。いわゆる新卒の一括採用です。
しかし、2021年卒以降から新卒の通年採用へ移行していくことが経団連と大学側で合意したことで、話題を呼びました。新卒の一括採用は企業にとってどのような影響が考えられるでしょうか。この記事では、メリットやデメリット、中小企業の打ち手を解説します。
新卒の通年採用とは? いつから? なぜルールが変わる?

新卒の通年採用がなぜ話題になっているのか?を理解するには、まず現行ルールの成り立ちを振り返る必要があります。
もともと現行の就活ルールとなったのは、戦後まで遡ります。戦後復興の好況と朝鮮戦争の特需により、企業は競い合うように卒業見込み者の確保をおこないました。採用活動の早期化により学業に悪影響を懸念した学校側と人材確保を急ぎたい企業側が調整する形で、1952年に「就職協定」が締結されました。
しかし、あくまで協定であり、協定違反に対するペナルティもなかったため、「青田買い」をする企業は後を立ちませんでした。その後、経団連が主体となり、大学側と幾度となく就活ルールのマイナーチェンジが繰り返され、現行ルールである「大学3年生3月に就職活動の情報解禁、大学4年生6月に選考開始」となりました。
しかし、このルールも経団連所属企業による互いに「抜け駆けはしませんよ」という紳士協定に過ぎないため、所属していない外資系企業やベンチャー企業は独自のスケジュールで採用活動を進めています。
なぜルールが変わるのか? 通年採用は2023年卒から?
上記の通り、何度も改定されているとは言え、いまから70年近く前に成立したルールであり、全企業が対象であるわけでもないため、形骸化しています。また時代背景や社会構造も大きく変化しています。
労働人口の減少、働き方の多様化、グローバル化、デジタルテクノロジーの発展など様々な要因によって、これまでの日本の「新卒一括採用」はもちろん「終身雇用」「年功序列」は成り立たなくなっています。
そのため2019年4月に経団連と大学側は諸事情を鑑み、新卒採用へと見直し、「一定のルールは保ちつつも多様性のある採用活動を可能にする」ことで合意しました。通年採用はその中のひとつの手法として注目を浴びています。
当初、学生の混乱を避けるために、2022年卒までは大きなルール変更は行わず、2023年卒から移行していく見通しと報道されていましたが、2020年3月の段階では経団連が2024年卒からの移行することを要望するなど流動的な状況です。
通年採用のメリット

次に通年採用のメリットを企業視点と学生視点で見ていきましょう。
企業側のメリット
一括採用とは異なり、通年採用となると選考スケジュールに余裕が生まれます。年間の採用計画に焦点を当て、競合の選考スケジュールに気を配りながら、1日に数十人から企業規模によっては数百人を選考することがなくなります。そのため、数合わせの内定なども減少し、自社に合った人材を確保しやすくなります。
また年間を通して募集ができるため、これまでのスケジュールではアプローチにしにくかった9月卒業の留学経験者や外国人などグローバル人材の採用にも柔軟に対応できるようになります。
学生側のメリット
学生も一斉スタートだった就職活動と比較すると、本来の自分が進みたい道をじっくりと吟味できるようになります。時限的な就職活動が人生を左右するといった強迫観念も薄まるため、「とりあえず就職」も減ることが予想されます。
スケジュールに余裕ができることで、幅広く様々な業界・業種を見渡すことができるため、1人あたりのエントリーする企業も増えるでしょう。
通年採用のデメリット

つづいて、通年採用におけるデメリットをメリットと同様に見ていきます。
企業側のデメリット
年間を通して、採用活動をするためコストがかさむことが予想されます。同時に学生側のメリットで述べたように、学生は企業を吟味して内定先を決めるようになります。売り手市場がつづく新卒採用において、企業はより選ばれる立場になっていくでしょう。
そのため、インターンシップの活用や企業のビジョンやメッセージの発信、採用チャネルの多角化など中長期の視点で施策を打たなくては、希望の人材を採用することが難しくなります。
学生側のデメリット
短期決戦ではなく長期決戦となるため、就職の準備や志望業界・企業の吟味に時間をかけられる一方で、想像以上に就職活動の期間が長くなることもあります。また採用通知がもらえるタイミングもばらつくため、同時進行での就職活動が難しくなります。その結果、学業との両立が難しくなり、勉学がおろそかになる可能性もあるでしょう。
企業が通年採用を成功させるポイント

就活ルールの見直しが2023年卒、もしくは2024年卒から適用される予定です。そのどちらだとしても、新卒採用の早期化・長期化は免れません。早めに対策や準備をしておくことで、優秀な人材へのアプローチも可能になります。ここでは通年採用を成功させるポイントを紹介します。
採用のマルチチャネル化
これまでは大手の就活サイトや合同説明会を通してのエントリーが一般的でしたが、採用の窓口をより多様化させることでより多くの学生と接点を持つことができます。
例えば、自社の採用サイトはもちろん、現在増えているダイレクトリクルーティング型の就活サイトの利用やリファラル採用などを活用しましょう。ダイレクトリクルーティングとは、企業が自ら求める人材にアプローチを仕掛ける採用活動です。また、従業員から採用候補者を紹介・推薦してもらう方法が、リファラル採用になります。これらに取り組んだ上でSNSやオウンドメディアの活用、オフラインでの企業のメッセージ発信や広報活動が必要になるでしょう。オフラインでの採用活動とはイベントやセミナー、説明会などの開催・参加が挙げられます。またマルチチャネルにすればいいわけではなく、それぞれの効果を分析して戦略的に採用活動を進めていきましょう。
Webを活用して採用エリア、ターゲットの拡大
採用チャネルの多様化と広報活動の効果を最大化するためには、採用エリアやターゲットを拡大することも検討しましょう。以前とは異なり、面接や会社説明会もWebを通じておこなうことができます。
これまで物理的にエントリーや選考が難しかった学生にもWebを活用することでリーチできる母数を増やすこと可能です。学生もできるだけ多くの企業と接点を持ちたがっているため機会を増やすためにはエリア、ターゲットを拡大していきましょう。
学生への理解を深める
通年採用となると就職活動の軸が変化するため、学生の姿勢も同様に変わります。そのため採用活動を成功に導くためには、これまで培ってきた学生像を刷新する必要があります。
まず学生がどのようなスケジュールで就職活動を始め、アクションを起こすのか。またどのような企業で働きたいと思っているのか、じっくりいろんな企業と会いたいのか、できるだけ早く内定先を決めたいのか、など学生の傾向も押さえておきましょう。また学生を分析して、最良のコミュニケーション方法を選択していきましょう。
中小企業は人材確保が難しくなる!?
新卒採用の早期化・長期化によって、コストが増大しても人材を確保できるとは限りません。多くの学生にエントリーしてもらうには、広報活動や根気強くおこなわなければいけませんが、大企業と比較すると中小企業はやはり厳しいと言わざるをえません。
そのため、企業の強みや独自性を打ち出す工夫や経営陣の新卒採用にかける意気込みが問われることになるでしょう。
まとめ
就活ルールの変更により、新卒採用市場が大きく変わる可能性があります。2023年卒からだと想定すると、すでにインターンシップの募集など早めにアプローチをかける必要があります。
現時点では、どの程度のルール変更があるかは明言されていませんが、現時点で就活ルールは形骸化されており、通年採用を導入している企業も多く存在します。常に動向を確認し、ルール変更へ備えておきましょう。