
バランスをとるのが目的じゃない?ワーク・ライフ・バランスのメリットとは

耳にする機会が増えたワーク・ライフ・バランスという言葉。働き方改革が注目されていることもあり、ワーク・ライフ・バランスも重要視されるようになっています。しかし、制度やルールだけが先行し、正しくワーク・ライフ・バランスへの理解が浸透していないケースが見受けられるのも事実です。今回はワーク・ライフ・バランスの正しい意味を改めて確認し、企業が取り組むメリットをご紹介していきます。
目次
ワーク・ライフ・バランスの意味、正しく説明できますか?
一般にも浸透し始めているワーク・ライフ・バランスですが、間違った意味で認識されていることも多いようです。よくあるのが、
・仕事と私生活のバランスを均等に保つ
・仕事よりも私生活を充実させる
といったように、仕事と私生活をそれぞれ別で考えてしまうという誤解です。

ワーク・ライフ・バランスの本来の意味は、「仕事と私生活の好循環」。単に仕事と私生活を均等にし両立することや、ただ私生活の割合を多くするだけではありません。ここには、仕事だけでもダメだし、私生活にも育児や介護、学習、趣味、休養、地域活動といった様々なものが含まれています。たとえば、次のような循環イメージで、仕事と私生活のどちらとも充実させることが真のワーク・ライフ・バランスです。

ワーク・ライフ・バランスの2つの概念
ワーク・ライフバランスには、ファミリーフレンドリーと男女均等推進という2つの概念が含まれています。どちらも重要な概念で、どちらがかけてもワーク・ライフ・バランスは実現しません。
ファミリーフレンドリー
仕事と家庭の両立支援とも言われるファミリーフレンドリー。働きながら家庭との両立をできるように、育児や介護をするための制度・環境を整えることを意味しています。
男女均等推進
男女の性別関係なく、能力に応じた平等な機会を与えることを目的としています。はじまりは、1985年に策定された男女雇用機会均等法で、それ以降は法改正を重ね、募集・採用・配置・昇進などで、女性も男性と同様の機会を確保することが努力義務から法的義務になりました。
ワーク・ライフ・バランスが注目される背景とは?
じつは、ワーク・ライフ・バランスという言葉自体は、目新しいものではありません。欧米ではすでに1980年代から取り組まれており、いまでは当たり前のものになっています。一方、日本で注目されるようになったのは、政府が「働き方改革」の実施を宣言し、日本人の働き方やライフスタイルを見直そうという取り組みがされてからと、つい最近のことなのです。
現在は、勤労世帯の過半数が共働きにも関わらず、働き方や子育て支援などは従来の形そのままと、決して共働きがしやすい社会基盤とは言えません。そのため、実際に仕事と子育てや介護などを両立するのは難しいのが現状です。これからさらに進む少子高齢化や人口減少、グローバル化などの問題に対応するためにも、社会基盤を再整備し、ワーク・ライフ・バランスを実現することが求められているのです。
ワーク・ライフ・バランスを実現すると、どんなメリットがあるの?
仕事と私生活の好循環ですから、ワーク・ライフ・バランスを実現することは従業員にとってはもちろん、企業にとってもメリットがあることです。具体的には、下記のようなことが期待できます。
企業のメリット ・業務効率改善による時間外労働の削減
・優秀な人材の確保
・従業員の離職や意欲低下の防止
・従業員を大事にするという企業イメージの向上
・仕事以外の体験から得られるスキルや人脈への期待
従業員のメリット ・育児や介護との両立が可能に
・時間確保による家庭や趣味などの私生活の充実
・休息の時間を十分に取ることができる
・仕事への意欲向上
具体的な取り組みは?
ワーク・ライフ・バランスの実現は、企業、従業員ともにメリットがあることがおわかりいただけたと思います。では、実現のためには、どういった取り組みをすればいいのでしょうか。たとえば、こんな制度やアイデアを導入している企業がありますので、ご参考までにご紹介します。
休暇
・有給を利用した連続休暇の推奨
・育児参加のための休暇
・配偶者出産休暇
労働時間
・ノー残業デーの実施
・業務の可視化とフロー
・配分の見直し
・残業を事前申請制にすること
多様な勤務制度
・時短勤務制度(勤務日数を減らす、勤務時間を減らす)
・変形労働時間
・テレワーク
企業ごとの状況により必要なものは異なりますが、「自社の従業員の現状はどうか?」と考えてみることが大切です。
まとめ

ただ休みを増やすだけ、仕事と私生活を均等にするだけではないワーク・ライフ・バランス。仕事と私生活、どちらも充実させることで、どちらにもいいことがある、好循環が期待できることがわかりました。離職を防ぐことや従業員のスキル向上も期待できるため、中長期的なリターンの視点でも重要だと言えそうです。
もちろん、ワーク・ライフ・バランスをいきなり全ての従業員に導入するのは難しいかもしれません。そこで、企業によってはワーク・ライフ・バランス実現のため、外部人材活用を強化したり、育児や介護と両立したい、勉強したい、など、直近の目標のある人から優先的に制度を利用してもらうなど、様々な方法をとっています。
あるいは従業員側でも、時代や自分のライフスタイルに合わせて、派遣という働き方を選ぶ人も増えています。働き方の多様化にともない、今後さらに注目されるワーク・ライフ・バランス。取り組み次第で好循環が期待できるため、これからワーク・ライフ・バランスの実現に注力していく企業も増えていきそうです。