
キャリア支援に助成金が使える!キャリアアップ助成金の「正社員化コース」をご紹介

あなたの企業では、助成金を上手く活用できていますか?助成金に難しい印象をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、要件を満たすことができれば、助成金は大きなメリットのある制度です。今回は助成金の中でも、生産性の向上や優秀な人材の確保につながる、キャリアアップ助成金についてご紹介します。
キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用である従業員のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善の取り組みを実施した企業へ助成される制度です。具体的な対象となるのは、有期契約者や短時間勤務者、派遣スタッフといった非正規労働者。返済の必要がないため、企業にとっても従業員本人にとってもメリットの大きい、活用しがいのある制度なのです。
キャリアアップ助成金には、人材育成や賃金改定など、目的により7つのコースがあります。今回はこの中でも、特に利用しやすく人気のある、正社員化コースにフォーカスしてご紹介します。
・正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・健康診断制度コース
・賃金規定等共通化コース
・諸手当制度共通化コース
・選択的適用拡大導入時処遇改善コース
・短時間労働者労働時間延長コース
正社員化コースとは
キャリアアップ助成金の正社員化コースとは、非正規の従業員を正規雇用として転換、あるいは直接雇用した場合に適用されるもの。ここでの「正規雇用」とは、勤務地限定社員や職務限定社員、短時間正社員も含みます。主に下記3つの取組があり、どの取組も従業員の労働意欲や能力の向上、そして企業の生産性向上を目的としています。
(1) 有期契約労働者 → 正規雇用労働者 へ切り替え
(2) 有期契約労働者 → 無期雇用労働者 へ切り替え
(3) 無期雇用労働者 → 正規雇用労働者 へ切り替え
どんな助成が受けられる?
正社員化コースでは、下記表のように企業規模や従業員の状況、生産性など、いくつかの条件を加味して、助成金が支給されます。
助成金支給額
実施内容 | 中小企業 | 大企業 | ||
---|---|---|---|---|
1人あたり助成額 | 通常の場合 | 生産性の向上が 認められる場合 |
通常の場合 | 生産性の向上が 認められる場合 |
(1) 有期 → 正規 | 57万円 | 72万円 | 42万7,500円 | 54万円 |
(2) 有期 → 無期 | 28万5,000円 | 36万円 | 21万3,750円 | 27万円 |
(3) 無期 → 正規 | 28万5,000円 | 36万円 | 21万3,750円 | 27万円 |
実施内容 | 1人あたり助成額 | (1) 有期 → 正規 | (2) 有期 → 無期 | (3) 無期 → 正規 |
---|---|---|---|---|
中小企業 | 通常の場合 | 57万円 | 28万5,000円 | 28万5,000円 |
生産性の向上が認められる場合 | 72万円 | 36万円 | 36万円 | |
大企業 | 通常の場合 | 42万7,500円 | 21万3,750円 | 21万3,750円 |
生産性の向上が認められる場合 | 54万円 | 27万円 | 27万円 |
上記(1)~(3)あわせて、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は20人まで。また、下記の特定条件を満たすことで、これらの助成額に加算した額が支給されます。
特定条件での加算
実施内容 | 中小企業 | 大企業 | ||
---|---|---|---|---|
1人あたり加算額 | 通常の場合 | 生産性の向上が 認められる場合 |
通常の場合 | 生産性の向上が 認められる場合 |
派遣労働者を派遣先で直接雇用した場合 (1) 有期→正規 、(3) 無期→正規 |
28万5,000円 | 36万円 | 28万5,000円 | 36万円 |
母子家庭の母、または父子家庭の父を転換等した場合 (1) 有期→正規 |
9万5,000円 | 12万円 | 9万5,000円 | 12万円 |
母子家庭の母、または父子家庭の父を転換等した場合 (2) 有期→無期、(3) 無期→正規 |
4万7,500円 | 6万円 | 4万7,500円 | 6万円 |
若年雇用促進に基づく認定事業主が35歳未満の者を転換等した場合 (1) 有期→正規 |
9万5,000円 | 12万円 | 9万5,000円 | 12万円 |
若年雇用促進に基づく認定事業主が35歳未満の者を転換等した場合 (2) 有期→無期、(3) 無期→正規 |
4万7,500円 | 6万円 | 4万7,500円 | 6万円 |
勤務地・職務限定正社員制度を新たに規定し、転換または直接雇用した場合 (1) 有期→正規、(3) 無期→正規 |
9万5,000円 | 12万円 | 7万1,250円 | 9万円 |
生産性の向上による加算
労働人口の減少にともない、生産性の向上は社会的に大きな課題となっています。そのため、従業員1人あたりの生産性を向上させた場合には、助成金が加算される制度が用意されています。具体的には、下記の計算式で算出された生産性が3年前と比べ6%以上向上していると、助成金加算の対象になります。
生産性=
(営業利益+人件費+減価償却費+賃借料+租税公課)/雇用保険被保険者数
よくある例としては、「利益や減価償却費(設備投資費)が増えた」場合や、「雇用保険被保険者数が減った」場合などに、生産性が向上する傾向にあります。
どうすれば助成を受けられる?
メリットの大きい助成ですが、支給対象となるには一定の要件があります。その中でも重要となる主な要件をご紹介します。
対象となる従業員の主な要件
・雇用期間6カ月以上の有期または無期契約労働者であること
・事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
・正規雇用になる約束として雇用された者ではないこと
対象となる事業主の主な要件
・キャリアアップ助成金に適した労働協約、就業規則を規定すること
・転換後6カ月間の賃金を、転換前6カ月間の賃金より5%以上増額させていること
・転換日の前後6カ月間に、雇用保険の被保険者を解雇していないこと
従業員の待遇・キャリアアップを念頭に、要件が規定されているのがポイントです。また、2018年度に新たに追加された「賃金を5%以上増額させていること」等のように、時勢にあわせて要件が変更されることもあるため、受給を検討する際には最新情報を事前に確認しておくといいでしょう。各要件は厚生労働省のサイト等にさらに詳しく記載されていますので、そちらもあわせてご確認ください。
受給までの流れ
助成金の活用にあたっては、下記のようにキャリアアップ計画を作成し提出する必要があります。この計画は、下記図のように転換前に提出する必要がありますので注意が必要です。計画への認定を受けた上で、正社員化に向けた施策を行っていきます。

まとめ
キャリアアップ助成金には7つのコースがあり、今回はその中でも正社員化コースにフォーカスしてご紹介しました。企業にとっては生産性の向上や優秀な人材の確保につながり、従業員にとってはキャリアアップや職務満足度向上につながる、非常にメリットの大きな制度になります。もちろん複数のコースを併用することも可能です。お得なキャリアアップ助成金を賢く正しく利用してみてはいかがでしょうか。